電気自動車の将来性
-EV化に伴う各国の対策や価格等の課題について-

電気自動車の将来性、EV化に伴う各国の対策や価格等の課題について

このページでは、電気自動車へのシフト(EVシフト)の進む中、現状や将来性についてまとめています。
世界各国でカーボンニュートラル、脱炭素社会に向けた取り組みの一環として自動車のEV化が行われる中、日本ではどのような取り組みを行っていこうとしているのか。
日本における電気自動車の将来について皆さんと一緒に考えていきたいと思っています。

EV TOWNおすすめの電気自動車について気になる方は、下記コラムをご参考ください。

1. パリ協定とEVシフトの関係性

今、世界のEVシフトが加速しています。それに大きな影響を与えているのが、2015年に正式合意された「パリ協定」です。

国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)は各国の首脳が集まって気候変動抑制に関する国際的な会議で、2015年にフランスのパリで行われた第21回会議(COP21) で歴史上はじめて気候変動枠組条約に加盟する 196カ国全ての国が削減目標・行動をもって参加することをルール化した公平な合意「パリ協定」となりました。
その取り組みの一環として欧州諸国が内燃機関(ガソリンエンジン)を廃止する動きを見せたことで、世界は一気にEVシフトを加速しました。

世界がどれだけ地球温暖化に対して危機感を持っていたのかというのが、このCOPの変遷を見ると読み取ることができます。

パリ協定のような世界の取り決めを発効するためには、いくつか条件を満たす必要があります。パリ協定の場合、

  1. 55カ国以上が参加すること
  2. 世界の総排出量のうち55%以上をカバーする国が批准すること

以上2つの条件がありました。
発効までには相当時間がかかるだろうと言われていましたが、多くの専門家の予想を上回る速さで条件が満たされました。
それには、当時の米・オバマ大統領が中国・インドなどのCO2排出量の多い国に批准を働きかけたことなどが大きな後押しとなり、翌年の2016年10月5日には条件を満たし、その翌月の11月4日に発効されました。これほどのスピード感でパリ協定の発効に至ったのは、それほどまでに世界各国が地球温暖化に対して関心が高かったからだと言えそうです。

また、このパリ協定は、持続可能な開発目標(SDGs)のゴール13番の「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる。」に向けた取り組みにもなっています。

また、このパリ協定は、持続可能な開発目標(SDGs)のゴール13番の「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる。」に向けた取り組みにもなっています。

こういった背景があり、パリ協定の合意が大きな起因となって世界のEVシフトが加速しています。現在世界各国が、具体的な目標や対策を発表しており、その中には電気自動車に関する発表も含まれています。
次は、世界各国のEVシフトに関する具体的な目標を一緒に見ていきましょう。

2.  世界の電気自動車(EV)化の取り組みについて

欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は、乗用車や小型商用車の新車によるCO2排出量を2035年までにゼロにする規制案を発表しました。
その後、2035年以降エンジン車の新車販売を禁止する意向を2021年7月に発表。ハイブリッド車(HV)を含むガソリン車の販売を事実上禁止し、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)への移行を促す内容で、欧州議会も22年10月にEU加盟国と合意しました。
しかし、ウクライナ、ロシア問題もあり2023年3月法案可決の最終段階でいくつかの欧州諸国から待ったがかかり、方針をぐるっと転換しました。
e-fuel(合成燃料)を使用する新車に限り販売を認めるというところまでが最近の流れになっています。

新型コロナウイルス感染拡大からの経済復興にあたり、環境に配慮した回復を目指す景気刺激策に「グリーンリカバリー戦略」というものがあります。
このグリーンリカバリー戦略は、パリ協定の達成に貢献し、SDGs(持続可能な開発目標)の達成にも一致した施策を実施することをポイントとしており、これを見ることでEVに関する目標や脱炭素社会に向けた対策を見ることができます。主要各国の対応は次のようになっています。

新型コロナウイルス感染拡大からの経済復興にあたり、環境に配慮した回復を目指す景気刺激策に「グリーンリカバリー戦略」というものがあります。このグリーンリカバリー戦略は、パリ協定の達成に貢献し、SDGs(持続可能な開発目標)の達成にも一致した施策を実施することをポイントとしており、これを見ることでEVに関する目標や脱炭素社会に向けた対策を見ることができます。主要各国の対応は次のようになっています。

2-1. フランス

パリ協定合意の地フランスは電動自動車(EV)推進賛成の代表ともいえる国で、2035年ゼロエミッション計画に強く支持している国の一つです。法案可決の最終段階で待ったをかけた欧州諸国に対し、妥協する様子を一切見せませんでした。
そんなフランスのグリーンリカバリー戦略は以下の通りです。

  • クリーン⾞両の購入補助⾦や低所得者世帯向けクリーン⾞両への買い替え補助の拡充、公共⾞両 における電動⾞の調達、将来の⾃動⾞業界のための投資等を実施。 〈80億ユーロ〉 (出典︓Plan de soutien à l’automobile)
  • ⾃転⾞利用の促進や公共交通の発展のために投資。〈12億ユーロ〉
  • 道路輸送に代わる選択肢を提供するため、鉄道網の整備・拡張などに投資。〈47億ユーロ〉

また、フランスは2040年までにガソリン車の新車販売を禁止する意向も示しています。

2-2. ドイツ

ドイツは、EUのガソリン車販売禁止に対して土壇場で待ったをかけた国の一つで、BMWやフォルクスワーゲンなどがある自動車大国です。
そんなドイツのグリーンリカバリー戦略は以下の通りです。

  • 2021年以降に販売される95gCO2/km超の新車乗用車の自動車税を排出量に応じて引き上げる
  • 電気自動車の購入に対する「エコボーナス(eco-bonus)」を倍増。〈22億ユーロ〉
  • バス・重量車(商用車)を近代化するプログラムに投資、化石燃料以外の電力で走行する車両の使用を促進。鉄道会社DeutscheBahnに追加株式を提供。〈50億ユーロ〉

2-3. アメリカ

アメリカは電気自動車の売り上げを伸ばしているテスラがあり、州ごとにEV化の取り組みの姿勢が異なっています。
アメリカ全体のグリーンリカバリー戦略は下記の通りです。

  • クリーンな公用車を調達し、国内のクリーン車や部品の調達能力の構築を加速
  • 電気自動車の為の充電ステーションを含む、自動車に対する大規模な投資
  • 米国で新しく製造されるすべてのバスを2030年までにゼロエミッション(温室効果ガスを排出しない車)に
  • 大気汚染削減のための燃費基準確立、米国製のクリーン車に対する消費者への直接還付など

アメリカのカリフォルニア州とニューヨーク州では、2035年にはハイブリッド車(HV)を含むガソリン車禁止の法律が可決しており、電気自動車の加速が進んでいます。

2-4. 中国

EUと一緒にEVの潮流を作っている中国は、CO2排出量世界一位です。どのようなグリーンリカバリー戦略を立てているのでしょうか。

  • 再生可能エネルギーの設備容量は世界一。水素・燃料電池産業も戦略的に育成
  • 遅くとも2060年までにカーボンニュートラル(2020年9月22日)
  • GDP単位当たりのCO2排出量を2030年までに05年比65%超削減、一次エネルギー消費 に占める非化石燃料の割合も約25%に増やす
  • 石炭火力を2020年までに1100GW未満にする(2016年。13次五カ年計画)

2030年までにハイブリッド車(HV)を除く、ガソリン・ディーゼル車の販売を禁止する意向を示しています。

ここまで主要国のグリーンリカバリー戦略について見てきました。
今回のEUの一連の騒動は急な方向転換で一旦収まろうとしており、この行方がEVの将来性を大きく左右するものかもしれません。
これからの世界の動向から目が離せません。

3. 電気自動車(EV)化に対する日本の課題と現状

電気自動車(EV)化に対する日本の課題と現状

日本は、2022年12月に「2035年にハイブリッド(HV)車を除いたガソリン車の販売を禁止する」と宣言しました。
しかし、現在電気自動車の普及率は1%にとどまっているというのが現状で、普及にはまだまだ多くの課題を残しています。
ここでは日本でEVを普及させるために解決しなければいけない課題と、現状について見てみましょう。

高速道路やガソリンスタンド、大型商業施設などで今も続々と増設されている充電インフラですが、まだまだ充電インフラが整っているとは言えそうにありません。 現在電気自動車が全体のシェア率を8割(PHEVやHV含む)としているノルウェーでは急速充電スタンドがいたるところに設置され充電インフラも整ってきていますが、それでも充電待ちの長蛇の列が絶えません。
ノルウェーの足元にも及ばないうちは日本のEVシフトはなかなか進まないかもしれません。

電気自動車はガソリン車と比べて航続距離が長くないため、移動距離が長くなればなるほど充電回数も増えます。
遠出目的ではなく、近場の移動で利用する用途で導入したいという方にはいいかもしれません。

電気自動車は車体価格が高く初期費用も掛かってくるため、EV導入のハードルを上げている要因の一つと言えそうです。
電気自動車には大きなリチウムイオンバッテリーが内蔵されていますが、このバッテリーに使われているレアメタルという素材が名前の通りなかなか供給できない素材です。
元より高い車体価格ですが、バッテリー価格が安定せず、車体価格がどんどん高騰していっているというのが現状です。

電気自動車は寒い地域、積雪している地域での走行が苦手です。
日本は世界屈指の積雪量を誇る国です。低温の中ではバッテリーの発電効率が悪くなってしまうことや、大雪の中充電が切れてしまったら充電する術がないため暖を取る方法がなくなってしまうほか、レッカー車を待つことしかできなくなるなどの不安要素があります。

電気自動車はEV充電器を家に設置して、帰ってきたら充電するというスタイルが一般的なモデルとなっていて、普通充電器で満充電するには数時間~十数時間かかります。 高速道路のPAやSA、大型商業施設などに設置されている急速充電器は1回30分使うことができ、残りバッテリー残量約20%から約80%まで充電できます。
急速の充電器であっても使用している方、待ち人数×30分の待ち時間が発生してしまいます。
EV充電器に関しては下記に解説したコラムがありますので、気になる方はこちらも要チェックです。

日本のEV化が遅れてしまっている原因は以上の通りだと考えられます。
電気自動車に合っていない気候や希少物質の不足からくる価格の不安定さ、充電インフラへの対応が遅れてしまっていることなど日本で普及するには逆風ばかり吹いてしまっていますが、2035年にはガソリン車の販売禁止を世界に向けて発信してしまっています。EV化の波は止められないでしょう。

3月のEUでの騒動で日本が今後どのような対応をしていくのか、注目が高まります。

4. 電気自動車の課題解決の糸口

電気自動車の課題解決の糸口

電気自動車の普及には課題が山積みでなかなか追い風になるようなニュースがありません。
そんななか本田技研工業は2021年、課題解決の大きな糸口となりそうな交換式充電バッテリー「Honda Mobile Power Pack(ホンダモバイルパワーパック)」を発表し、すでに運用を開始していますので、参考にご紹介いたします。
この交換式バッテリーは、ホンダの考える電動モビリティの課題解決に向けた取り組みから開発された製品になっています。
ホンダの考える課題とは、①充電時間が長い ②航続距離が短い ③電池価格が高い の3つで、この点に着目して開発された充電バッテリーになっています。

充電が切れそうだなと感じたタイミングでバッテリー交換ステーションへ行き、すでに充電されているバッテリーと交換するだけなので、電気の補充に時間がかかりません。

バッテリーの個数で解決しています。バッテリーの数を増やすことで出力を変更したりや航続距離を伸ばしたりすることができます。

電池は交換・シェアすることができるというモバイルパワーパックの特性が解決してくれます。

モバイルパワーパックの図説

モバイルパワーパックは対応した規格が搭載されているものであれば「ホンダ製品」や「電気自動車」といった枠を越えて、様々な用途で使用することのできるバッテリーパックです。使用用途は多岐にわたり、電気自動車のみならず除雪車やショベルカー、家庭用蓄電池などとして幅広く活用することができます。
また、電力源は太陽光など再生可能エネルギーの余剰電力から充電するため、電力系統の充電負荷を減らし再生可能エネルギーの利用拡大とともに脱炭素社会にも貢献している、これからを見据えた未来のバッテリーとも言えます。
課題や不安の解決に大きく貢献するであろうこのバッテリーの普及は、電気自動車利用の促進に大きく役立つかもしれません。

日本ではすでにホンダと日本郵便との協業という形で、街中に走っている赤い郵便配達仕様の電動バイクにはホンダモバイルパワーバッテリーが使われています。中国や台湾でも盛り上がり見せている交換式充電バッテリーサブスクリプション。
これから世界にも日本国内にも、どんどんその広がりを見せていきそうです。

また日本政府はEV普及を促進するため、電気自動車(EV)が充電のために高速道路から一時退出できるよう制度の緩和を検討しています。
NEXCO東日本、中日本、西日本の3社は、現在サービスエリアに設置されている約2倍である1100口までEV急速充電器を増やしていく方針で、政府も補助金で支援し充電インフラの整備を進めていくような動きを見せています。
さらに同3社は、2024年度からEV利用者が、充電のために高速道路から一時的に降りることができる新たな制度の導入を検討しています。
高速道路を走行中に充電が必要になるケースなどが想定されていて、この新しい制度では、料金の調整をする方向で話が進んでいます。

今後も政府や企業がしっかりとこの課題に向き合い取り組んでいくことによって電気自動車への不安も払しょくされ、EVシフトも加速していくかもしれません。

その他にも、これまでの不安要素を補うような性能のいい新規EV車種が今も続々と出てきています。
また、これらの課題のいくつかは同じゼロエミッション車である燃料電池車(FCV)であれば問題ないとの意見もあります。
現在トヨタが燃料電池車の開発に力を入れており、もしかすると近いうちに燃料電池車が電気自動車の立場にとって代わる日も来るかもしれません。

5. まとめ

まとめ

いかかだったでしょうか。昨今活発化しているEV情勢。
今後EV化の波は止まらないと予想できますが、同じゼロエミッション車である燃料電池車の台頭の可能性も見えてきました。
最終的にどうするのか、選び取るのは私たちです。これから私たちがどのような選択をし、どのように対応するのか。世界や日本の動向に注目しつつも、自分でしっかり情報を掴み、決定できるように準備していきましょう。

EVTOWNではこれからも電気自動車に関連した情報を積極的に発信していく予定です。ぜひまた見に来てくださいね。